
インナーチャイルド。霊性。
普段の生活では、聞き慣れない言葉です。
「インナーチャイルド」は、スピリチュアルの世界でよく使われる言葉ですが、スピリチュアルで使われる言葉は、ぼんやりとして中身が見えにくいことが多いものです。
まして「霊性」については、正しく知る人がほとんどいません。
インナーチャイルドも、霊性も、それぞれ別の記事で詳しくお伝えしています。このページでは、その2つの「関係」についてお伝えします。
このページでお伝えしたいことは、つきつめると2つです。
① 心を癒すと、霊性は上がりやすくなります。インナーチャイルドの癒しは、霊性向上の修行のひとつです。
② 霊性が上がると、心は癒しやすくなります。修行が、癒しを助けてくれます。
このふたつは、互いを支え合う両輪です。
この2つを、順番に、できるだけ分かりやすくお話しします。霊性向上の勉強をしていない方にも読んでいただける内容です。
なぜ、心を癒すと霊性が上がるのか
インナーチャイルドが、霊性を下へ引っ張っている
霊性は、修行や日々の積み重ねによって、少しずつ高まっていきます。
ところが、その霊性を、下へ下へと引っ張っているものがあります。
インナーチャイルド。子どもの頃に決めた、自分を苦しめる考え方や感じ方のことです。
高まろうとする霊性と、下へ引っ張るインナーチャイルド。ちょうど綱引きのような状態です。これでは、どれだけ修行を積んでも、なかなか上に進めません。
インナーチャイルドそのものについて、はじめての方はこちらから。
→ インナーチャイルドとは何か ─ 心理学で分かりやすく解説
「私は愛されない」は、真実ではない
別の記事で、「意識にも霊性が宿る」とお伝えしました。苦しみを生む価値観は、霊性の低い意識です。
そして、その価値観は真実ではありません。
たとえば、「私は愛されない」という価値観。
でも、考えてみてください。誰にも愛されずに、人は今日まで生きてこられるでしょうか。誰かに愛されてきたからこそ、いま、ここに生きているのです。そして私は、すべての人が神仏に愛されていると考えています。
「自分は間違っている」という価値観も、同じです。正しさは状況によって変わります。間違いに見えることも、見る方向を変えれば、間違いではないことが多いのです。
真実ではない価値観を握りしめたままでは、せっかく修行をしても、霊性は常に下へ引っ張られ続けて、効率がよくありません。
誤った意識が霊性を下げる仕組みは、こちらでお話ししています。
→ 霊性を下げる要因と、その対処
価値観が変わるとき、霊性は大きく上がる
インナーチャイルドの癒しによって、価値観が変わり、我慢していた感情が消化されると、下への引っ張りが、ふっと外れます。
そのとき、ずっとしなっていた弓が矢を放つように、霊性は大きく高まります。
この、価値観の「決め直し」を、心理学では再決断と呼びます。子どもの頃に自分で決めたものだからこそ、自分で決め直すことができるのです。
数ある修行のなかでも、インナーチャイルドの癒しは、苦しみを減らし、魂を成長させる、とても早い道だと感じています。霊性を妨げているもの、そのものを外していくからです。
私自身の体験
ひとつ、私自身の話をします。
以前、師匠の伝えるインナーチャイルドの癒しのやり方が、どうしても理解できず、師匠に不満を持っていた時期がありました。いま思えば、その不満で、私の霊性はずいぶんと下がっていました。
そのとき、後ほどご紹介する「自分は分からない(成長するな)」という思い込みのワークをしました。イメージのなかで子どもの頃の小さな私になり、その頃の親を見ると、親が、子どもに見えたのです。
親自身が子どもだったので、私は「大人とは何か」が分からないまま育った。そのことに気づき、その頃の自分を癒しました。
しばらくして師匠のレッスンに伺うと、「何があったの」と聞かれました。体や心の調子が良いことは自分でも分かっていましたが、師匠への反発で下がっていた霊性が一気に元へ戻り、それまで以上に高まっていたのです。
価値観がひとつ変わるだけで、霊性は大きく動きます。私はそれを、身をもって体験してきました。
癒しも、神道や仏教と同じ「苦しみから抜け出す道」
「癒しが修行だなんて、言いすぎではないか」と感じる方もいらっしゃると思います。
世界の伝統的な教えを、ならべてみます。
- 神道は、穢(けが)れを禊(みそぎ)で祓い、身も心も清らかになることを説いています
- 仏教は、生きる苦しみをなくしていく「悟り」を説いています
- ヨーガは、心の作用を静めることを説いています
- インナーチャイルドの癒しは、心理学の言葉で、苦しみから抜け出す方法を説いています
入り口の言葉は違っても、向かう先はひとつです。
苦しみから抜け出し、本当の自分になること。私はそれを「霊性向上」と呼んでいます。
悟りとは、苦しみのない世界のこと
仏教でいえば、苦しみから抜け出しきった境地が「悟り」です。霊性を限りなく高めた境地 = 悟り = 苦しみのない世界、と言うことができます。
私の師匠は、この境地を「何があっても、24時間幸せ」と表現していました。師匠の師匠は「至福」と表現していました。
そして、私たちの苦しみの根元には、インナーチャイルドがあります。だからこそ、その癒しは、悟りへ向かう修行のひとつでもあるのです。
本当の自分を、インナーチャイルドが曇らせている
人の心と魂を図にすると、このようになります。

内側の円が真我(しんが)、本当の私です。外側がエゴ(自我)で、その根本に、欲とインナーチャイルドがあります。
ここでいう欲とは、満たされていないから、欲しがり続けている心のことです。十分に満たされていれば、欲にはなりません。
インナーチャイルドも同じです。「自分は愛されない」と決めた子どもの心は、愛をもらっても受け取れません。受け取れないから満たされず、満たされないから求め続けます。欲と同じ構造です。
「もらっても、受け取れない」とは、どういうことか
たとえば、人から褒められると「そんなことないです」と返す方は多いと思います。謙遜のマナーとして言っているなら、それでよいのです。けれど、どんなに褒められても、心の底から「そんなことない」と思っている方がいます。
褒められても受け取らないので、褒められたことには目が向きません。そして、褒められなかったときのことだけをよく覚えていて、「私はいつも褒められない」と心から思い続けてしまいます。
恋人やパートナーとの関係でも、同じことが起きます。
「自分は愛されない」と思っていると、「愛しているよ」と伝えられても、嘘のように感じて受け取れません。受け取れないから満たされず、不安になって「愛してる?」と聞きます。「愛しているよ」と返ってきても、「本当に?」と、やはり受け取れません。
満たされない不安から、相手を縛ったり、何もしていない相手を疑ったりしてしまう。その結果、パートナーは疲れて離れていき、「ほら、やっぱり私は愛されていない」と、思い込みをさらに深く確かめることになってしまいます。
責めるための話ではありません。本人が悪いのではなく、子どもの頃に決めた「受け取れない心の仕組み」がそうさせているのです。だからこそ、根本にあるインナーチャイルドを癒すことに意味があります。
外から癒し、内から輝かせる
私たちは、本当の自分を持って生まれてきます。けれど、この世界に適応するために、インナーチャイルドをまとって生きています。子どもの頃は、それが自分を守ってくれました。大人になるにつれて、同じものが生きづらさに変わっていくのです。
- インナーチャイルドの癒しは、この曇りを外から少しずつ取り除いていく道です
- 霊性向上の修行は、内側の真我を輝かせ、その輝きで曇りを内から溶かしていく道です
どちらも、同じ曇りに向かっています。
曇りが晴れて、自分=真我となること。それが悟りであり、人の生きる目的だと、私は考えています。
霊性が上がると、心は癒しやすくなる
ここまでは、「癒しが、霊性を高める」というお話でした。実は、逆の方向もあります。
心のコップが、大きくなる

修行によって霊性が高まると、心に余裕ができて、事実が見えやすくなります。「感情処理法とインナーチャイルドの癒し」の記事でお話しした、心のコップが大きくなるイメージです。
余裕ができると、いままでの考え方とは違う、新しい考え方や感じ方に気づきやすくなります。霊性向上に努めている方が癒しに取り組むと、進みが早いと感じています。
心のコップと未処理の感情(ストレス)の関係は、こちらでお話ししています。
→ 感情処理法とインナーチャイルドの癒し
気づきは、修行の最中にも訪れる
気づきが訪れるのは、癒しのワークの最中だけではありません。
これも、私自身の例をひとつお話しします。
インナーチャイルドの癒しのワークをしていて、気持ちはある程度出したものの、再決断までは至らず、少しモヤモヤが残ったまま終えた日がありました。何かが残っているのに、それがつかめない。「また明日やればいい」と思っていました。
その後、日常の祝詞(のりと)を唱えていると、ワークで見ていた場面について、「こう考えたらよかったんだ」という新しい考え方に、ふっと気づいたのです。
このように、祝詞を唱えているとき、山で峯入(みねい)りをしているとき、神社仏閣に参拝しているときなど、霊性が高まったそのときに、気づきが訪れることがあります。
また、師匠とともに山に入るときのように霊性が大きく上がる場面では、何もしていないのにインナーチャイルドの抑え込んだ感情が消化されて、価値観の縛りがゆるむこともあります。
我慢した感情を感じて消化していく方法は、こちらでお話ししています。
→ 感情処理法とインナーチャイルドの癒し ─ 我慢した気持ちの手放し方
「心を見つめる」と「修行」は、両輪
ここまでのお話を整理します。
- 心を見つめる(インナーチャイルドの癒し)は、霊性を下へ引っ張る根を外していきます。根が外れると、そのあとの修行が効きやすくなります
- 修行(祝詞・お経・ヨーガ・参拝)は、霊性を高めて、心に余裕をつくります。余裕ができると気づきやすくなり、癒しが進みます
どちらか一方だけでは、片方の車輪で進むようなものです。
修行で霊性を高めながら、心を見つめて根を癒していく。ふたつがそろうと、霊性が「高まりやすい自分」へ、変わっていきます。
霊性向上を阻む、3つの思い込み
ほとんどすべての思い込み(インナーチャイルド)が霊性向上を阻みますが、代表的な3つを、簡単にご紹介します。
こうした思い込みには、21の型があります。詳しくは、別の記事でお話しする予定です。
→ インナーチャイルドの21の思い込み(※ 公開予定)
「自分は分からない」(成長するな、という禁止令)
安心できる大人がそばにいなかった子どもは、「正しさとは、こういうもの」という心のモデルを築けないことがあります。本当は分からないまま、なんとなくの正しさで生きていくため、人からの「間違っている」という批判を過剰に恐れます。
学びの場では、知らないことを認めるのが苦手で、指導者の言葉を素直に受け取れない。そんな、学びへの抵抗として現れることがあります。
先ほどの私の体験も、この「成長するな」の癒しでした。
「学ぶ」は「真似(まね)ぶ」が語源といわれます。癒しによって学ぶ心地よさを取り戻し、師の姿を心に取り入れていくことで、人は成長していきます。
「自分はいない方がいい」(存在するな、という禁止令)
無視や虐待、「親の不幸は自分のせいだ」と受け取ってしまうような経験から決断される思い込みです。
私たちは、霊性を高めるためにこの世界に生まれてきました。自分の命を否定することは、その道ごと否定することになり、霊性を大きく下げてしまいます。
癒しによって、「無条件の愛は存在する」「自分は神仏に愛されている」と心から分かっていくこと。それが、この思い込みからの回復の道です。
※ この思い込みは、命に関わることのある、いちばん深いものです。一人で対処しようとせず、専門の医療機関や相談窓口、信頼できる専門家のもとで取り組んでください。
「感謝を感じてはいけない」(感謝するな、という禁止令)
人への不信や恨みを教えられて育つと、人間関係でいつも警戒し、温かみを求めては「裏切られた」と感じる繰り返しになりがちです。「ありがとう」と言葉では言えても、心に湧き上がる感謝を感じることが苦手です。
実は、感謝は、霊性を高める感情です。同じ修行をしていても、そのときの感情によって、霊性の変化には大きな差が出ます。
一人で行(ぎょう)をしていても、その行には、師匠や、教えを伝えてこられた先生方、ご神仏の力が宿っています。その有り難さを感じながら行うことで、霊性はより高く引き上げられていきます。
人からしてもらっていることに目を向け、感謝の気持ちを少しずつ練習していくことで、次第に感謝を感じるようになっていきます。
よくある質問
Q. スピリチュアルで語られる「インナーチャイルドの癒し」と、同じものですか?
スピリチュアルでいう「前世の傷」のような説明に、乗り切れなかった方もいらっしゃると思います。確かに、前世の傷というものはあります。ただ、それを理由に、インナーチャイルドを「対処できないもの」にしてしまわないことが大切だと考えています。仮に前世の傷が根本にあったとしても、その傷は、今世で生まれ育つ過程で強化されています。まずは、いま理解できる場面から、一つひとつ癒していくことが大切です。
このサイトでお伝えしている癒しは、交流分析という心理学に基づくもので、「決断」「再決断」「禁止令」という、長年の臨床で確かめられてきた枠組みの上に立っています。そして霊性のお話は、神道・仏教・修験道という伝統に根ざしています。心理学の確かさと伝統の深さの、両方に足をつけてお話しするのが、このサイトの立場です。
Q. 神社にお参りしていれば、インナーチャイルドは癒えますか?
霊性が大きく上がるとき、抑え込んだ感情が消化されて、縛りがゆるむことは、たしかにあります。けれど、修行をしていない方が、お参りだけでインナーチャイルドを癒すことは、あまりないと考えています。
神仏は、すべての人に手を差し伸べていますが、霊性の高さに比例したお付き合いをしてくださいます。そして、自ら成長しようとする行いに、応えてくださいます。霊性を高めることと、インナーチャイルドを癒すこと。このふたつに修行として取り組むとき、神仏が気づきを与えてくださることがあります。
Q. 霊性向上の修行をしていなくても、癒しに意味はありますか?
あります。インナーチャイルドの癒しは、それだけでも、苦しみから抜け出す確かな道です。心理カウンセリングは、心の健康にとても有効です。カウンセラーが「インナーチャイルド」という言葉を使うことは多くありませんが、心理カウンセリングでも、必要に応じて、インナーチャイルドの癒しと同じような取り組みが行われています。インナーチャイルドについては「インナーチャイルドとは何か」を、ご自分のペースで読み進めてください。
まとめ ─ 心を癒し、魂を育てる
最後に、このページの2つの結論を、もういちど整理します。
- 心を癒すと、霊性は上がりやすくなる。インナーチャイルドは霊性を下へ引っ張っていますが、その価値観は真実ではありません。価値観が変わる(再決断)とき、しなっていた弓が矢を放つように、霊性は大きく高まります
- 霊性が上がると、心は癒しやすくなる。心のコップが大きくなり、気づきが訪れやすくなります。「心を見つめる」と「修行」は両輪です
心を癒すことと、魂を育てることは、ひとつのことの両面です。
当サイト「心と霊性の研究室」は「心を癒し、魂を育てる」という、苦しみから抜け出すことと、霊性を高めること、ふたつの幸せを同時に得てほしいという思いをもっています。
霊性の全体像については、「霊性とは何か ─ 目には見えない魂の話」でお話ししていますので、合わせてご覧ください。