
- 感情を感じたら、もっとつらくなる
- 嫌だなんて、言ってられない
- 怖がってたら、もっと怖くなる
- 泣いたって、何も変わらない
- 悲しいのは分かるけど、元気を出して
こんな言葉を、誰かに言われたこと。あるいは、自分自身に言い聞かせたこと。そんな経験は、ないでしょうか。
感情に対するネガティブな思い込みは、私たちのなかにも、社会のなかにもあふれています。そのため私たちは、知らず知らずのうちに、感情を感じないようにして生きています。
けれど、感情を我慢しても、苦しみは消えません。むしろ、感じていないからこそ、いつまでもつらいのです。
このページでは、感情は、正しく感じれば消えていくという心の仕組みと、それを使った「感情処理法」という心理療法の考え方をお伝えします。そして、その感情処理法を使って、インナーチャイルドを癒していく道筋まで、できるだけ分かりやすくお伝えします。
感情は、正しく感じれば消えていく。── 我慢しても消えません。むしろ、感じていないからこそ、いつまでもつらいのです。
私たちは、感情を「感じないように」している
日本の文化の影響もあって、私たちは「感情を感じてはいけない」と、気持ちを止めることが、生活のなかで意外と多くあります。
怖がっていたら笑われて、笑っていれば「へらへらするな」と言われ、怒っていれば「そんなことで怒るな」と言われる。これらはすべて、「感情を感じるな」というメッセージです。
子どもの頃から、こうしたメッセージを受け取り続けて、私たちは感情を感じることそのものに、ブレーキをかけるようになってしまっています。
感情は「感じてはいけないもの」ではない
「感じたら、もっとつらくなる」は誤解
冒頭に挙げた「感情を感じたら、もっとつらくなる」というのは、感情のことを知らないために生まれた、間違った知識です。
感じても、もっとつらくはなりません。詳しくは後でお伝えしますが、むしろ感じていないからこそ、ずっとつらいのです。
「泣いたって変わらない」── たしかに、状況は変わらないかもしれません。でも、状況が変わらないからこそ、泣いて気持ちを出して、せめて心だけでも楽になってほしい、と私は思います。
感じることと、表現することは、別のこと
「怒りを相手にぶつけては、社会生活ができない」── その通りです。
けれど、感情は、相手にぶつけたり、表現したりしなくてもいいものです。ただ、感じればいい。
ここは、とても大事なところです。
- 怒りは、感情です
- 怒るのは、行動です
感情を感じることと、感情のままに行動することとは、別のことです。怒りを感じても、相手に怒る必要はありません。ただ、感じることが大切です。むしろ、相手に怒りをぶつけないために、怒りを適切に感じる必要があります。
感情には、ちゃんと意味がある
感情は、人にもともと備わっているものです。人は上手くできていて、意味のないものは備わっていません。
たとえば、
- 怒りは、迫りくる危険に立ち向かい、現状を打破するための感情
- 悲しみは、過去を乗り越えるための感情。じゅうぶんに悲しむことで、人は前に進めます
- 恐れは、危険を回避するための感情。怖さがなければ、危ないことをして命を落としてしまいます
感情ごとの「肯定的な意味」を整理すると、次のようになります。
| 感情 | 肯定的な意味・働き |
|---|---|
| 怒り | 現状打破、危機突破、障壁の除去、警告の発信、やる気の向上 |
| 悲しみ | 過去を乗り越える、効力感の回復、共感、援助を引き出す、新たな選択 |
| 恐れ | 危機の知覚・回避、逃走と闘争の促し、慎重な行動、適切な戦略を立てる |
| 嫌悪 | 不快なものの排除、受け入れない、迅速な決断と行動 |
| 寂しさ | 孤独の回避、人間関係をつくる |
このように、感情にはちゃんと意味があります。ですから、感情を使わずに押さえ込んでいると、生活のなかに、何らかの問題が生まれやすくなるのです。
我慢した感情は、たまっていく
緊張していたり、怒っていたり、ショックを受けていたり ── 感情に流されているときは、物事を正しく判断できません。落ち着いていないときに決めたことを、あとで「なんであんなことをしたんだろう」と後悔した経験は、誰にでもあると思います。
そんなとき、誰かに気持ちを聞いてもらうと、落ち着いてきます。「嫌なものは嫌だ」と吐き出したり、涙を我慢せずに泣いたりすると、なんだか楽になる。気持ちを吐き出すと楽になるというのは、多くの人がなんとなく知っていることです。
心理学では、ストレスとは、未処理の感情だと言われることがあります。吐き出す機会がなく、心にたまった感情が、ストレスとなって心と体、そして魂を傷つけてしまうのです。
コップの水で考える
心のなかに、コップがあると思ってください。
- コップ = 心の容量
- 水 = 未処理の感情
コップには、半分ほど水が入っています。残りの上半分が「心の余裕」です。私たちは普段、この心の余裕の部分で物事を考えています。
ここに水が注がれて、もう少しであふれそうになると、余裕がなくなります。余裕のないところでは、物事を正しく考えられません。
落ち着いて考えれば、そんなことしなくてよかったのに ── そう思うことも、心に余裕がないときには、仕方のないことなのです。
さらに水が注がれると、どうなるでしょう。心がいっぱいになって、あふれてしまいます。
余裕のないときに、誰かのひと言が加わると、キレてしまう。泣き崩れてしまう。何もかも嫌になってしまう。最後のひと言は大したことでなくても、余裕がないから、受けとめられないものです。

だからこそ、心のコップがいっぱいになる前に、ストレス(コップの水)を吐き出しておくことが大切です。
誰かに話を聞いてもらうのもいいですが、いつも話を聞いてくれる相手がいるとは限りません。そこで役に立つのが、「感情処理法」という心理療法です。
感情の、2つの性質
感情処理法を理解するために、感情の2つの性質を知っておきましょう。
- 感情は、感じれば消えていく
- 感情は、形を変える
感情は、感じれば消えていく
誰かに話を聞いてもらうと楽になるのは、話すことで、その感情を感じて、消化しているからです。
気持ちや、気持ちの乗った思いを語りながら、感情は消化されていきます。そして、相手にその気持ちを受け入れてもらう。すると、さらに感じて消化される ── そんな好循環が生まれていきます。
感情は、形を変える(ラケット感情)
いくら感じても、モヤモヤがずっと続く。そういうこともあると思います。これは、感情が「形を変えている」からです。
交流分析という心理学に、「ラケット感情」という考え方があります。これは「偽物の感情」と呼ばれていて、本当の感情の代わりに、親の愛情を得るために形成された代用の感情と考えられています。
このラケット感情は、いくら感じても、なかなか消化されません。その奥にある本当の感情を感じることで、感情は消化されていきます。
たとえば、イライラの奥に悲しみが隠れていたり、悲しみの奥に怒りが隠れていたりします。
表面の感情をいくら感じても落ち着かないときは、その奥に、別の本当の感情があるのかもしれません。感情処理法においては、湧き出る感情を一つひとつ丁寧に感じていきます。
イライラで困っている人はとても多いと思いますが、イライラや悲しみの感情処理は、恐れや怒りに比べて、一人でも対処しやすい感情だと感じています。
イライラがなくなるだけでも人生が大きく変わる方もいると思います。後ほどお伝えする本には一人で行う感情処理の方法が書いてあります。よろしければ参考にしてください。
「ラケット感情」については、別記事で詳しくお話ししています。
→ ラケット感情とは ─ 本当の感情の代わりに感じる感情(※ 公開予定)
感情処理法とは
感情処理法は、感情を正しく感じて、たまった感情(ストレス)を減らしていく心理療法です。たまった感情が減ると、心に余裕が生まれ、考えや行動が、心地よい方向へ変化することが期待できます。
感情処理は、4つのステップで進む
感情処理法は、おおまかに、次の4つのステップで進みます。
- 感情に気づく
- 感情を、否定せずに受け入れる
- 感情を体験する
- 呼吸とともに、感情を吐き出す(処理する)
簡単に言えば、「気づいて → 感じて → 処理する」ということです。
「ただ感じればいい」と言葉にすると、簡単に聞こえます。けれど私たちは、程度の差はありますが、感じないようにして今まで生活をしてきました。
例えば、以前の私は、人前で、涙を見せることも、テンション高く喜ぶことも、怒りをあらわにすることも、恥ずかしいことだと思っていました。
本来、感情を感じることは恥ずかしいことではありません。当時の私は感情を感じることに、ネガティブな思い込みがあったということです。
私と同じように、感情にネガティブな思い込みがあったり、感じることに慣れていなかったりすると、無意識に体に力が入って、感じることにブレーキをかけてしまいます。
日常生活で適切に感情を感じていくには、感じている時に力を抜くことが大事です。
力を抜いてリラックスして、「感情を否定せず、ただ少し感じてみる」。── それだけでも、心は少し軽くなります。
さらに深めていきたい方へ
感情を感じることでおかしくなることはないのですが、ホームページという不特定の方が見るところで、具体的な感情処理法のやり方を書くのは控えさせていただきました。
感情処理法を、もっと深く知りたい・実際に取り組んでみたいという方には、私が学んでいるメンタルサポート研究所の代表・倉成央先生の著書『感情処理法で心がすっきりするノート』をおすすめします。分かりやすく、それでいて深い内容まで扱われています。
より深く取り組みたい方は、信頼できる専門家のもとや、レッスンのなかで進めていくのがよいと思います。
感情処理法で、インナーチャイルドを癒す
感じ方や考え方は、パターン化されています。それは、幼少期の親子関係のなかで、「こんな扱いをされる自分は○○だ」というように、自分とはどういう人か、この世界をどう生きればいいかを決めたことから始まります。
このとき、「親が怒るから」「大変そうだから」「嫌そうだから」と、本当の気持ちを我慢して、周囲の環境に適応する方法を学んできました。
インナーチャイルドの「思い込み(禁止令)」については、こちらで一つずつ詳しくお話ししています。
→ インナーチャイルドの21の思い込み(※ 公開予定)
考え方や感じ方を変えようとしても、この我慢した気持ちが残っているので、なかなか変えられません。
そこで、感情処理法を使います。
我慢した、その時に身を置いて、そこで感じる気持ちを、丁寧に感じて消化していく。すると、心に余裕が生まれて、「あれ、親が大変でも、私は子どもなんだから、迷惑をかけてもいいよな。私は○○ではないな」── そんなふうに、考え方の締め付けが、緩んでいきます。
これが、感情処理法を使ったインナーチャイルドの癒しです。
そもそもインナーチャイルドとは何か。心理学の視点から、分かりやすく解説しています。
→ インナーチャイルドとは何か ─ 心理学で分かりやすく解説
インナーチャイルドの癒しは、幼い頃の深い感情に触れることが多いものです。だからこそ、安全に支えられた場で取り組むことが大切になります。もし、強いつらさや「消えてしまいたい」という気持ちが続くときには、どうか一人で抱えこまず、専門の医療機関や相談窓口を頼ってください。
インナーチャイルドの具体的な癒し方は、7つのステップにまとめています。
→ インナーチャイルドの癒し方 ─ 7つのステップ(※ 公開予定)
よくある質問
Q. 感情を感じると、もっとつらくなりませんか?
もっとつらくなるということはありません。感じれば消化されて、楽になっていきます。ただし、体に力を入れていると、つらく感じることがあります。力を入れるのは感情を止めようとすることで、感じようとしながら、感じないようにブレーキを踏んでいる状態です。そんなときは、ゆっくり息を吐いて、力を抜いてください。力を抜けば楽になります。
Q. イライラやモヤモヤが、なかなか消えないのは、なぜですか?
表面の感情の奥に、他の感情が隠れていることがあります。たとえば、イライラの奥に悲しみが隠れていることがあります。少し感じても変化を感じられなかったら、他に何か気持ちがないか探してみてください。感情は、何層にもなっていることがあります。奥にある感情を感じることで、感情は少しずつ消化されていきます。
Q. 我慢した気持ちは、どこへいくのですか?
心の中にたまっていきます。たまった感情は、ストレスとして感じられます。たまっていることに気づかない(ストレスとしても感じない)と、痛みや何らかの症状として、体に表れることがあると考えられています。
まとめ ─ 感じて、手放して、今を生きる
感情を否定せずに、日常のなかで感じることを続けていると、次第に、その場で自然に感情を感じて処理できるようになっていきます。
その都度、自然に感じて手放せるようになると、過去を引きずることなく、将来に不安を抱えすぎることなく、今を生きることができるようになっていきます。
私たちの周りには、「感情を感じてはいけない」というメッセージがあふれています。その中で生活してきた私たちは、どうしても感情を抑えてしまう癖がついています。でも、感情は、感じても大丈夫なものです。
たまった気持ちを息とともに、フーっと吐き出す。毎日の生活を少し楽にするためにも、そんな時間を持つこともお勧めです。
そして、感情を感じられるようになっていくと、インナーチャイルドの癒しもしやすくなります。心の成長とともに、霊性向上も進んでいきます。
心と魂は、もともとひとつにつながっています。霊性の全体像については、「霊性とは何か ─ 目には見えない魂の話」でもお話ししていますので、合わせてご覧ください。