
「どうして私は、いつも同じところで苦しくなるのだろう」
- 人間関係が続かない
- 頑張っているのに自信が持てない
- あと一歩でうまくいくのに、自分で壊してしまう
そんな繰り返されるパターンの背景には、子どものころに身につけた"思い込み"が隠れているのかもしれません。
心理学(交流分析)では、これを「禁止令(きんしれい)」と呼びます。交流分析家のロバート&メアリー・グールディング夫妻は、この禁止令を12に分け、整理・体系化しました。
12の思い込み(禁止令)
まずは、12の一覧です。
- 存在するな ──「私は、いない方がいい」
- 自分であるな ──「ありのままの私では愛されない」
- 子どもであるな ──「甘えてはいけない」
- 成長するな ──「大人になってはいけない」
- 成功するな ──「うまくいってはいけない」
- 実行するな ──「行動してはいけない」
- 重要であるな ──「私は、大切な存在ではない」
- 所属するな ──「私は仲間はずれだ」
- 親密になるな ──「近づいてはいけない」
- 健康であるな ──「元気な私では愛されない」
- 考えるな ──「私は考えられない」
- 感じるな ──「感情を感じてはいけない」
禁止令とは、子どものころに、親や周囲との関係の中で受け取った「○○してはいけない」「○○であってはいけない」というメッセージのことです。
小さな子どもは、まだ正しい判断ができません。そのメッセージを受けて、生き延びるために「私は○○しないでおこう」と、自分で決めます。この決定を、交流分析では決断と呼びます。
本来は、その時の自分を守るための決断でした。けれど大人になると、同じ思い込みが、生きづらさへと変わっていきます。
これらの思い込みは、多かれ少なかれ、誰もが持っているものです。自分を責めるための分類ではなく、「これかもしれない」と気づくために読んでください。
そして、子どものころ自分で決めたものだからこそ、大人になった今、自分で決め直すことができます。この決め直しを再決断といい、それを促していくのが、インナーチャイルドの癒しです。
インナーチャイルドそのものについては、こちらで詳しくお話ししています。
→ インナーチャイルドとは何か ─ 心理学で分かりやすく解説
なお、ロバート・グールディングの流れをくむジョン・マクニールによって、禁止令は25程度に再分類され、考え方も発展しました。
このページでは、分類はグールディング夫妻の12を用いていますが、内容にはマクニール先生から学んだことも含めています。当サイトの他のページでは、マクニール先生の禁止令や、師匠の分類でインナーチャイルドを説明していることがあります。ご了承ください。
① 存在するな ──「私は、いない方がいい」
虐待や暴力、あるいは「あなたさえいなければ」「あなたのせいで」と受け取ってしまうような経験。親から愛されていないと思える言動。親の苦しそうな姿や、家庭の重苦しい雰囲気の中で生まれることもあります。
「お母さんが苦しいのは私のせいかもしれない」「私がいなければ楽だったのかもしれない」と考え、「私はいない方がいい」という結論にたどり着くことがあります。
大人になってから現れやすいパターン
- 生きる価値がないと感じる
- 誰からも愛されない感覚
- 過剰に尽くしてしまう
- 承認を求め続ける
- 「消えてしまいたい」と感じることがある
新たな決断・成長
この思い込みを持つ人は、自分には生きる価値がないと思っているため、自分の価値を証明し続けようとします。
しかし本来、人の価値は成果や役割によって決まるものではありません。何もしていなくても、価値があるのです。
「私は生きる価値がある存在」という事実に気づき、条件なしに自分の存在を肯定できるようになっていくこと。
※ この思い込みは、命に関わることがあります。一人で抱え込まず、専門の医療機関や相談窓口、信頼できる専門家のもとで取り組んでください。
② 自分であるな ──「ありのままの私では愛されない」
兄弟姉妹と比較されたり、「もっと○○ならいいのに」と言われ続けたりすると、子どもは「今の私ではダメなんだ」と思うかもしれません。
すると、本当の自分を隠し、期待される自分を演じ始めます。子どもにとって、愛されることは生存そのものだからです。
大人になってから現れやすいパターン
- 自分のある部分に劣等感がある
- 自分の性に対する違和感がある
- 自分らしく生きていない感覚がある
- 素の自分を出せない
- あるがままの自分ではよくないと思っている
新たな決断・成長
成長とは、理想の自分になることではありません。ありのままの自分を受け入れて生きられるようになることです。
「私は私のままで価値がある」という事実に気づき、弱さや欠点も含めて、自分であることを認めていくこと。
③ 子どもであるな ──「甘えてはいけない」
親の相談相手だった。家族を支えていた。弟や妹の面倒を見ていた。そんな子どもは、「私が頑張らなければ」と決断するかもしれません。その結果、自分の気持ちよりも、他者の期待に応えることを優先するようになります。
大人になってから現れやすいパターン
- 過剰に他者を助ける
- 人に合わせる
- 責任を抱え込みやすい
- 常に誰かの面倒を見ている
- 甘えることが苦手
新たな決断・成長
本当の自立とは、一人で何でもできることではありません。必要なときに助けを求められることも、成熟の一部です。
人の世話をすることを手放して、「甘えてもいい。頼ってもいい」と、自分を大事にすること。
④ 成長するな ──「大人になってはいけない」
親が子離れできなかったり、成長を寂しそうに見ていたりすると、子どもは無意識に「成長すると愛されなくなる」と感じることがあります。
大人になってから現れやすいパターン
- 自立が怖い
- 決断を先延ばしにする
- 責任を避ける
- 子どもっぽい見た目や立ち振る舞い
- 学びや成長にブレーキがかかる
新たな決断・成長
成長することは、誰かを裏切ることではありません。大人になることと、愛されることは両立できます。
「私は大人である」ことを認め、自分のことを自分で行い、責任をもっていくこと。
⑤ 成功するな ──「うまくいってはいけない」
成功が近づくと失敗する。なぜか最後の一歩で止まる。そんな人の背景には、成功によって傷ついた経験があることがあります。
子どもは、「成功すると嫌われる」「成功すると孤独になる」と学びます。
また、親から「どうせうまくいかない」と批判されて決断することもあります。
大人になってから現れやすいパターン
- あと一歩で失敗する
- 自分でチャンスを壊してしまう
- 成功に罪悪感がある
- 飽きっぽい
- 自分を過小評価する
新たな決断・成長
成功したくないのではありません。成功によって失うものを、恐れているのです。
その恐れを理解し、成功と愛情を切り離していくこと。「私は成功できる。成功しても、愛情を失わない」ということを理解して、そのための努力をしていくこと。
⑥ 実行するな ──「行動してはいけない」
心配性の親に育てられ、何をしても止められた。失敗を許されなかった。そんな環境では、行動そのものが危険に感じられ、行動の代わりに、心配や不安を使うようになるかもしれません。
大人になってから現れやすいパターン
- 決断できない
- 準備ばかりする
- 行動の直前で止まる
- チャンスを逃す
- 失敗を恐れる
新たな決断・成長
人生は、考えるだけでは変わりません。「失敗しても大丈夫。行動しよう」と決めて、小さな行動を積み重ねていくこと。そして、その行動を楽しんでいくこと。
⑦ 重要であるな ──「私は、大切な存在ではない」
話しても聞いてもらえない。意見を言うと否定される。兄弟姉妹ばかり注目される。すると子どもは、「私は大事な存在じゃない」と思うかもしれません。
大人になってから現れやすいパターン
- 自分の重要性を示そうとする
- 人前が怖い
- 評価に敏感
- 自信がない
- 間違いを認めようとしない
新たな決断・成長
この禁止令を持つ人は、無意識に自分を小さく扱っています。しかし本来、人は誰でも、尊重される価値を持っています。
「自分は重要であり、価値がある」という事実を理解して、人からの愛情や称賛を、素直に受け取っていくこと。
⑧ 所属するな ──「私は仲間はずれだ」
家庭の中で孤立感を感じていたり、安心できる居場所がなかったりすると、子どもは「私は仲間になれない」と決断することがあります。
大人になってから現れやすいパターン
- 集団の中で孤独を感じる
- 居場所がないと感じる
- 人との間に壁を作る
- 集団を避ける
新たな決断・成長
人とのつながりは、傷つく可能性もあります。しかし同時に、癒しや安心をもたらすものでもあります。
「集団に入りたい」という気持ちに気づき、自ら入ることを決め、その意思を示していくこと。
⑨ 親密になるな ──「近づいてはいけない」
子どもは本来、親や大切な人とつながりたいと願っています。甘えたい。分かってほしい。受け入れてほしい。
しかし、親密になろうとして傷つく経験をすると、その願いは恐れへと変わるかもしれません。「近づくと傷つく」「人と距離を取った方が安全だ」と決断することがあります。
大人になってから現れやすいパターン
- 自分は他者とは違うという感覚を持っている
- 人との距離を縮められない
- 本当の愛を求め続ける
- 親しくなる前に距離を取る
- 一人の方が楽だと感じる
新たな決断・成長
この思い込みを持つ人は、人が嫌いなのではありません。本当はつながりたい気持ちを持ちながら、傷つくことを恐れているのです。
「親密さを求めている」こと認め、自分から近づいていくこと。
安心感の土台(愛着)がうすいときの話は、こちらでお話ししています。
→ 愛着と霊性 ─ HSP・クンダリニーの方の生きづらさ
⑩ 健康であるな ──「元気な私では愛されない」
病気のときだけ優しくされた。苦しんでいるときだけ心配された。そんな経験から、「弱っていると愛される」と学習することがあります。
大人になってから現れやすいパターン
- 不調を繰り返す
- 元気になることに罪悪感がある
- 無理をして体調を崩す
- 病気になって愛情を得ようとする
新たな決断・成長
病気になることと、愛情を得ることは、つながっていません。愛情や関心を得るために、無意識に不調になろうとしていることに気づき、「自分を病気にすることを、やめる」と決めること。そして、自分をいたわっていくこと。
⑪ 考えるな ──「私は考えられない」
自分の考えを否定されたり、「私の言う通りにしなさい」と考えを押し付けられ続けると、自分で考えることよりも、周囲の考えに合わせることが安全と考えるかもしれません。
大人になってから現れやすいパターン
- 自分の判断に自信がない
- 人に答えを求める
- 優柔不断になる
- 頭が真っ白になる
- 自分の意見が言えない、分からない
新たな決断・成長
大人になった今は、子どものころより、多くの知識と経験があります。「私には考える力がある」という事実を理解して、正解を求めすぎず、「私はこう考える」と、自分で考えていくこと。
⑫ 感じるな ──「感情を感じてはいけない」
感情を表現すると叱られる、馬鹿にされる。泣くことを許されない。怒ることを否定される。そんな環境では、「感情を感じない方がいい」と、思うかもしれません。
大人になってから現れやすいパターン
- 自分の気持ちが分からない
- 特定の感情が希薄
- 表情が乏しい
- 子どものころの記憶がない
新たな決断・成長
感情は、自分自身を理解するための、大切なメッセージです。悲しみも、怒りも、寂しさも、安全に感じられるようになると、人生はより豊かになります。
「私は感じてもいい」と感情を感じることを自分に許して、生活の中で、感じる練習をしていくこと。
抑えてきた気持ちの手放し方は、こちらでお話ししています。
→ 感情処理法とインナーチャイルドの癒し ─ 我慢した気持ちの手放し方
おわりに
12の思い込みを見てきました。当てはまるものがいくつもあって、苦しくなった方もいるかもしれません。
これらの思い込みは、程度の差はあっても、すべての人が持っているものです。たくさん当てはまったからといって、「自分はダメだ」と落ち込む必要はありません。自分を知るための材料として使ってください。
そして、自分で決めたものだからこそ、自分で決め直すことができます。それが、インナーチャイルドの癒しです。思い込みが多いということは、それだけ伸びしろも多いということです。癒しを進めると、人生は「こうするしかない」から「こうすることもできる」へと変わっていきます。
具体的な癒し方は、こちらでお話ししています。
→ インナーチャイルドの癒し方 ─ 思い込みをほどいて、選べる自分になる
思い込みと霊性の関係は、こちらでお話ししています。
→ インナーチャイルドの癒しと霊性向上 ─ 心を癒すことは、魂を育てる修行
霊性の全体像については、「霊性とは何か ─ 目には見えない魂の話」もあわせてご覧ください。